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普通に生きるべき?2:地球星人について

  • Writer: charlottegoff
    charlottegoff
  • Sep 7, 2021
  • 4 min read

去年のクリスマス、「Earthlings」という、Ginny Tapley Takemoriが英訳した村田沙耶香の「地球星人」を妹にプレゼントした。妹も本の虫で、村田さんの「コンビニ人間」が好きだったし、いつか英訳された日本文学の読書会に参加したいとも言っていたので、ちょうどいいと思って買った。正直なところ、妹は本をいつか私に貸してくれるだろうという下心もあった。


最近、その時がやっと来た。妹がエジンバラに遊びに来てくれた時に、Earthlingsを持って来てくれた。渡しながら、このような警告をした。


「よかったよ。よかったけど、不思議で、暗い本だった。気を付けてね」


地球星人は間違いなく、不思議でダークな小説だ。読みながら「ええっ」と思わない人は少ないだろう。


レビューを見たら、「気持ち悪い・グロテスク・クレイジー」という言葉がよく出てきた。英語のレビューも見てみたけど、ほぼ同じ感じだった。 ‘Outrageous, crazy, disturbed’.

まあ、確かにユニークな小説だ。しかしその期待で読んで、一番驚いたのは、いかに共感できるところがあったということだった。


*


主人公の奈月は毎年、家族と一緒にお父さんの実家でお盆休みを過ごす。きれいで自然が豊かなところだし、恋人であるいとこの由宇もいるので、奈月はその夏休みを年中に楽しみに待っている。


Earthlingsの可愛い表紙、そしてお父さんの穏やかな実家で舞台されることは快活なストリーを期待させるかもしれない。しかし、そこから本の内容はどんどん不穏になっていく。奈月は家族からの身体的と精神的虐待、そして塾の先生からの性的虐待を受ける子供のころを過ごす。ある夏、もうすでに「結婚」しているいとこ同士の奈月と由宇はお互いにこの約束をする:


「なにがあってもいきのびること」‘Survive, whatever it takes.’


その約束は「地球星人」の一番大事で、影響をもたらすことだと思う。その後の経緯はすべて、約束に従おうとする結果なのかもしれない。何があっても、奈月は一生懸命生き延びようとする。ただ年がたつにつれ、彼女の生き延び方は変わっていく。


私たちが最初に出会う奈月は自分のことを「魔法少女」として考える。その後、自分のことを「ポハピピンポボピア星人」だと思うようになる。そうすることで、奈月は自分のことと他の人を区別できる。彼女自身と、暴力を振るっている周りの「地球星人」を区別することは、自分を守るための対策だ。


トラウマを受ける人‐特に子供たち‐はよく解離する。解離というのは、自分の一つの部分(記憶・感情・思考・意識などなど)が他の部分と分断されることだ。例えば、身体的暴力を振るわれているうちに、感情はどこかに「とんでいく」。感情がどこかに飛んでいくことで、痛みを感じなくなる。つまり、解離というのは、自分を守るための方法だ。奈月は性的虐待を受けてから、味覚音痴になる。自分のことを他人と分断することも、解離だと言えるだろう。


奈月は他の人と区別されたまま、大人になる。周りの大人、そしてその人たちがやっていることを、傍目からみる。結婚・こども・仕事。その三つのものは「地球星人」が欲しがるもので、奈月にとっては興味のないものだ。だけど、周りの人たちは自分たちと違う人にどうしても納得できない。奈月の、「普通の人」から離れられた立場から、私たち読者も普通でいることについて考え直すことができる。


これが、私の村田さんの一番好きなところだと思う。私たちが思う「当たり前」なことを考え直させること。我々の思う「常識」ってなんだろうと考えさせること。


数か月前に、村田さんの「コンビニ人間」についてブログを書いた。そこで、村田さんが(おそらく)聞いていることについて書いた。


「普通でいることというのは何?」

「普通に生きることって重要なのか?」


地球星人は同じようなことを聞いていると思う。ストリーの内容はもっとショッキングだけど、我々の世界もショッキングだ。今週テキサス州では、妊娠6週目以降の中絶は法律的に禁止された。つまり、中絶を受けられる女性はほとんどいなくなる。「地球星人」では、大人の奈月の家族や友達はみんな奈月に子供を産むように物凄いプレッシャーをかける。彼らと違う人たちを放っておけない。もし生活を自由に送れていたら、奈月はポハピピンポボピア星人になる必要はなかったと思う。


村田さんが描いている地球星人の世界と、私たちの世界は、そんなに遠いもののかな?

Earthlingsを読み終わったら、妹に電話をした。確かにダークな話だけど、思っていたほどショッキングではなかったかもと、妹に伝えた。


「まあ、私もポハピピンポボピア星人かもしれないね」と冗談で言った。


しかし妹はこう答えた:


「そうかもね。そう言うと思った」


いちいちフェミニズムや、社会問題についてうるさい私は、そう思われてたか?!


言うまでもないことだと信じたいけど、いくら村田さんのテーマや社会問題についての考え方が大事で同感できるものだと思っていても、奈月たちが最後にやることに賛成することはもちろんできない 笑


地球星人より

 
 
 

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